2026年10月26日、将棋の西山朋佳(にしやま・ともか)さんが、女性として初めて「棋士」になることが正式に決まりました。
ニュースでは「白玲(はくれい)」「クイーン白玲」「フリークラス四段」など、聞き慣れない言葉も登場しています。
そもそも白玲とは何なのでしょうか。また、将棋には女性のプロもいるのに、なぜ今まで女性の棋士がいなかったのでしょうか。
この記事では、将棋をまったく知らない方にも分かるように、タイトルの意味や棋士と女流棋士の違い、女性だけの制度が生まれた理由、そして西山さんが棋士になるまでの経緯を、表を使いながら解説します。
西山朋佳の白玲とは何?将棋のタイトルを簡単に解説
白玲(はくれい)とは、女性の将棋のプロである「女流棋士」が争う大会で、チャンピオンに与えられる称号です。
正式な大会名は「ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦」といいます。
そもそも将棋でいう「タイトル」とは、大きな大会のチャンピオンを表す特別な称号のことです。
ボクシングの世界チャンピオンのようなイメージですね。
女流棋士には、白玲以外にもさまざまなタイトルがあります。
| 大会名 | チャンピオンの称号 |
|---|---|
| 白玲戦 | 白玲 |
| マイナビ女子オープン | 女王 |
| 女流名人戦 | 女流名人 |
| 女流王位戦 | 女流王位 |
| 女流王将戦 | 女流王将 |
| 女流王座戦 | 女流王座 |
| 清麗戦 | 清麗 |
| 倉敷藤花戦 | 倉敷藤花 |
女流棋士のタイトルは全部で8つあり、それぞれ別の大会で争われます。
そのため、一人で複数のタイトルを同時に持つこともできます。
例えば「女流四冠」とは、4つの異なるタイトルを同時に保持しているという意味です。4回優勝したという意味ではありません。
白玲戦の「七番勝負」とは?
白玲戦では、現在のチャンピオンと挑戦者が「七番勝負」で対戦します。
七番勝負とは、最大7回対戦し、先に4勝した人が勝者になる仕組みです。
例えば、次のような結果だったとします。
| 対局 | 現在の白玲 | 挑戦者 |
|---|---|---|
| 第1局 | ○ | × |
| 第2局 | × | ○ |
| 第3局 | ○ | × |
| 第4局 | ○ | × |
| 第5局 | × | ○ |
| 第6局 | ○ | × |
| 合計 | 4勝 | 2勝 |
この場合は、現在の白玲が先に4勝したため、第7局を行わずに決着します。
現在のチャンピオンが勝てば「タイトル防衛」、挑戦者が勝てば「タイトル奪取」と呼ばれます。
西山朋佳さんは2026年10月10日の第6期白玲戦で、福間香奈(ふくま・かな)さんに4勝1敗で勝ち、白玲のタイトルを守りました。
白玲とクイーン白玲の違いとは?
白玲とクイーン白玲は、名前が似ていますが意味が異なります。
| 白玲 | クイーン白玲 | |
|---|---|---|
| 意味 | 現在のチャンピオン | 長年の実績によって得られる特別な称号の資格 |
| 条件 | 白玲戦で勝つ | 白玲を通算5期獲得 |
| タイトルを失ったら? | 白玲ではなくなる | 獲得した資格は失わない |
| イメージ | 現役の王者 | 長年の活躍をたたえる名誉 |
ここでいう「通算(つうさん)」とは、続けてという意味ではなく、これまでの合計という意味です。
つまり、白玲を合計5期獲得すると「クイーン白玲」の資格が得られるのです。
西山さんは2021年に初代白玲となり、2022年に一度タイトルを失いました。
しかし、2023年に奪い返し、その後も防衛を重ねて2026年に通算5期を達成しました。
この実績が、今回の女性初の棋士誕生につながっています。
女流棋士と棋士は何が違う?
ここが、将棋初心者には少し分かりにくいところです。
実は、将棋には「棋士」と「女流棋士」という2つの異なるプロ制度があります。
| 棋士 | 女流棋士 | |
|---|---|---|
| 対象 | 男女ともになれる | 女性を対象とする |
| 主な入り口 | 奨励会で四段に昇段 | 研修会などで資格を取得 |
| 段位の例 | 四段・五段・六段 | 女流初段・女流二段・女流三段 |
| 主な大会 | 名人戦・竜王戦など | 白玲戦・女流名人戦など |
| プロなの? | プロ | プロ |
どちらも将棋を職業とするプロですが、資格や参加する大会などが異なります。
そして、女流棋士にも段位があります。
| 女流棋士の段階 | 説明 |
|---|---|
| 女流2級 | 女流棋士としての出発点となる段階の一つ |
| 女流1級 | 成績によって昇級 |
| 女流初段 | さらに実績を積んで昇段 |
| 女流二段・三段 | 勝利数やタイトル戦での実績などで昇段 |
| 女流四段以上 | より多くの実績が必要 |
ただし、女流棋士の段位を上げても、自動的に男女共通の「棋士」になるわけではありません。
女流棋士は、棋士になる前の段階ではなく、独立したプロの制度なのです。
なぜ女性だけ「女流棋士」という別の制度があるの?
そもそも、なぜ女性だけに別の制度があるのでしょうか。
その背景には、将棋界の歴史があります。
| 時期 | 将棋界で起きたこと |
|---|---|
| 昔の将棋界 | 女性の競技人口が少なく、女性の棋士もいなかった |
| 1974年 | 女性がプロとして活躍する機会を広げるため、女流棋士制度が誕生 |
| その後 | 女流棋士の大会が増え、タイトル戦も充実 |
| 2025年 | 白玲通算5期の実績で棋士への編入資格を得られる新制度が承認 |
| 2026年 | 西山朋佳さんが新制度の条件を達成 |
女流棋士制度は、女性が将棋の世界で活躍する機会を広げるために創設されました。
ただし、女性が男女共通の棋士を目指すことは禁止されていません。
女性も奨励会などを通じて棋士になることができます。
つまり、女性には従来から男女共通の棋士を目指す道と、女流棋士として活動する道があったのです。
なぜ今まで女性棋士がいなかったの?
女性も棋士になれるのに、なぜ今まで一人も誕生しなかったのでしょうか。
その理由を理解するには、棋士になるまでの仕組みを知る必要があります。
一般的には「奨励会(しょうれいかい)」というプロ棋士の養成機関に入り、成績を上げていきます。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| ① 奨励会に入る | プロ棋士を目指す人が集まる養成機関 |
| ② 6級から1級 | 対局の成績によって級を上げる |
| ③ 初段から三段 | さらに勝ち進んで段位を上げる |
| ④ 三段リーグ | 原則、半年間の成績上位2人が四段に昇段 |
| ⑤ 四段 | 正式な「棋士」になる |
最大の難関は、最後の三段リーグです。
三段まで進んでも、原則として半年間で四段になれるのは成績上位のわずか2人。
さらに奨励会には年齢制限もあり、長く続ければ必ず棋士になれるわけではありません。
西山朋佳さんも2020年の三段リーグで14勝4敗という好成績を残しましたが、同じ成績の人が3人いたため、事前の順位の差で四段昇段を逃しました。
また、女性の将棋人口の少なさや、歴史的な育成環境なども背景として考えられます。
ただし、女性棋士が誕生しなかった理由を一つに断定することはできません。
確かなのは、女性が棋士になることは禁止されていなかったものの、これまでその厳しい条件を突破した女性がいなかったということです。
西山朋佳はなぜ女性初の棋士になれた?2025年の新制度とは
西山朋佳さんは、以前から男女共通の棋士を目指していました。
奨励会で三段まで進んだものの四段には届かず、2021年に退会。
その後は女流棋士として活躍しながら、2024年から2025年にかけて棋士編入試験にも挑戦しました。
棋士編入試験とは、一定の成績を残した人が棋士になるために受けられる試験です。
西山さんが受けた試験では5人の棋士と対局し、3勝すれば合格となる仕組みでした。
結果は2勝3敗。惜しくも不合格でした。
しかし、2025年に新しい制度が作られました。
それが「白玲を通算5期獲得した女流棋士に、棋士への編入資格を与える」というものです。
西山さんが今回、女性初の棋士になるまでの流れを整理してみましょう。
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 2021年 | 奨励会を退会し、女流棋士として活動 |
| 2025年1月 | 棋士編入試験で2勝3敗、不合格 |
| 2025年6月 | 白玲通算5期で棋士への編入資格を得られる新制度が承認 |
| 2026年10月10日 | 白玲通算5期を達成! |
| 2026年10月26日 | 棋士への編入が正式決定 |
| 2027年4月1日 | 四段の棋士として活動開始予定 |
今回の新制度では、白玲を合計5期獲得すると、新たに棋士編入試験を受けずに棋士への編入資格を得られます。
西山さんは、この条件を満たした初めての女性となりました。
フリークラスとは?普通の棋士と何が違う?
西山朋佳さんは、2027年4月1日から「フリークラス四段」として活動する予定です。
フリークラスとは、将棋のプロ棋士が所属する区分の一つです。
将棋には、名人を目指すための「順位戦」というリーグ戦があります。
フリークラスの棋士は、この順位戦には参加しませんが、それ以外の公式戦には大会ごとの条件に応じて出場できます。
| 順位戦に参加する棋士 | フリークラスの棋士 | |
|---|---|---|
| 正式なプロ棋士? | ○ | ○ |
| 順位戦に参加 | ○ | × |
| 順位戦以外の公式戦 | ○ | ○(大会ごとの条件あり) |
| 順位戦への参加 | 参加している | 一定の成績を収めると参加できる |
つまり、フリークラスも正式なプロ棋士です。
また、一定の成績を収めると、順位戦の「C級2組」というクラスに入ることもできます。
西山さんはまずフリークラスからスタートし、棋士として新たな挑戦を始めることになります。
まとめ
今回は、西山朋佳さんの「白玲」とは何か、そしてなぜ今まで女性棋士がいなかったのかについて解説しました。
白玲は、女流棋士が争う大会のチャンピオンに与えられるタイトルです。
そして、白玲を合計5期獲得すると「クイーン白玲」という特別な資格が得られます。
将棋には男女共通の「棋士」と、女性を対象とする「女流棋士」という2つのプロ制度があり、これまで女性が棋士になるための壁は非常に高いものでした。
西山さんは長年の挑戦と女流棋士としての実績を積み重ね、2025年に設けられた新制度によって、女性初の棋士への編入が決まりました。
2027年4月から始まる西山さんの新たな挑戦にも注目したいですね。
参考資料
・日本将棋連盟「西山朋佳女流四冠 フリークラス棋士編入のお知らせ」
https://www.shogi.or.jp/news/view.php?id=b913f6ce71e1a5bb
・日本将棋連盟「プロ棋戦の規定等について」
https://www.shogi.or.jp/faq/provisions/
・日本将棋連盟「プロ棋界」
https://www.shogi.or.jp/knowledge/world/01.php
・日本将棋連盟「ヒューリック杯白玲戦・女流順位戦」
https://www.shogi.or.jp/match/hakurei/
・白玲戦・女流順位戦中継ブログ「西山白玲が防衛」(2026年10月10日)
https://kifulog.shogi.or.jp/hakurei/2026/10/post-b4a9.html

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